大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和48年(行ツ)15号 判決

愛知県尾西市起字下町二二二番地

上告人

加藤清六

名古屋市中区三の丸三丁目三番二号

被上告人

名古屋国税局長

米里恕

右指定代理人

平塚慶明

愛知県一宮市栄四丁目五番七号

被上告人

一宮税務署長

伊藤新吉

右当事者間の名古屋高等裁判所昭和四四(行コ)第一九号、昭和四五年(行ケ)第一号所得税審査決定取消請求ならびに所得税決定及び加算税賦課決定処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四七年一〇月一六日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

被上告人一宮税務署長に対する本件上告を棄却する。

被上告人名古屋国税局長に対する本件上告を却下する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原審の確定した事実関係のもとにおいては、本件課税処分を違法とはいえないとした原審の判断は是認することができないものではなく、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

なお、上告人は、原判決中被上告人国税局長に対する裁決取消請求に関する部分につき、上告の理由を記載した書面を提出しない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、三九九条の三、三九九条、三九八条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一 裁判官 団藤重光)

(昭和四八年(行ツ)第一五号 上告人 加藤清六)

上告人の上告理由

第一点 原判決は審理不尽又は理由不備乃至理由齟齬(民訴法三九五条六号)の違法がある。

本件は所謂代物弁済予約型式をとつた変型担保契約についての判例の革命的改変が絡んだ事案である。従つて、この判例改変の時期に格別留意し、それを争点として、判断がなされなければならない。

しかし乍ら原判決は右改変による新判例に依拠して本件の例のような金銭消費貸借に付随してなされた代物弁済予約について本来の代物弁済成立型と担保権的性格の清算型に分類し、後者を更に処分清算型と帰属清算型に類別し、専ら課税処分の便宜上一般論として説示を構成することによつて、不当に右争点を回避されている。

要するに右判例の改変の経過並にその前後に於ける上告人の債務者として被る不安定な立場については全く顧慮されなかつたのは審理不尽又は理由不備乃至理由齟齬の違法がある。

即ち原判決(名古屋高裁判決書二七枚目表)によれば「本件代物弁済予約は本来の代物弁済予約ではなく清算を予定した担保的なものとみるべき余地があるのであるがそのいづれであつても‥‥‥中略‥‥‥本件土地の所有権が移転した昭和四〇年一二月四日において、元金及び右同日までの利息ならびに遅延損害金の合計額について、右土地の譲渡により収入すべき権利が確定したということができる。」と説示されているが同時点は新判例の形式前であつて、当時は金銭消費貸借に付随してなされた代物弁済予約は暴利行為で契約が無効でない限り、本来の代物弁済を成立させるものと解されていたものである。

しかして、右本件土地は本件金銭消費貸借の債務の履行に代えて給付すべき担保目的物件の三筆の土地の中の一筆の土地に過ぎないから、債権者から債務者上告人に対し代物弁済目的物件の残部につき給付の免除などの意思表示がなされないかぎり、消費貸借による債務の総額が消滅したと云うことは理解出来ないところである。

もとより左様な意思表示がなされていないから、同時点において、右説示の様に譲渡による収人すべき金額は確定していなかつたわけである。(この点「権利確定主義」に違背している。)又上告人は同時点において譲渡所得を申告し得なかつたわけである。

しからばこれと異る原判決の説示は失当であり、その違法は原判決主文に影響を及ぼすこと明かであるから当然破毀さるべきである。

以上

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